2024.03.22
豆大福の育児日誌 その12

春眠暁を覚えず
暖かい日が少しずつ増えてきて、ついついうたた寝してしまう今日この頃です。
私は豆大福と一緒にベッドで寝ていますが、朝は私よりもお寝坊さんで、私が起きた後もベッドに居座る日がたびたびあります。
さて、みなさんは愛犬と一緒に寝ていますか?
アイペットの調査では、32.8%の飼い主様がいつもペットと一緒に寝ており、26%の飼い主様が時々一緒に寝ているという報告があります。合わせると半数以上の方が一緒に寝ているということになりますね。
それにも関わらず、日本ではペットと一緒に寝ることをあまり推奨していない記事やサイトをよく見かけますが、一緒に寝ることで得られるメリットについてたくさんの論文があることをご存知でしょうか?
今回は、ペットと一緒に寝ることのメリット&デメリットについてお話ししたいと思います。
1, リラックス効果
ペットと一緒に寝ることのメリットの1つ目、まずは「癒し」ですよね。
一緒に寝ている方なら、みなさんお分かりになるかと思います。一緒にくっついて寝ると、その体温や仕草に癒されますよね。
実は、ペットといることで、愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌されるということがわかっています。このオキシトシンは、不安や恐怖を抑制することでリラックスさせる作用があります。また、コルチゾールホルモンの分泌や血圧を低下させるといった、抗ストレス作用もあるのです。
また、オキシトシンの分泌により、レム睡眠と関わりのあるシータ波の生成を促進する可能性があり、より良い睡眠が得られると言われています。実際に、ペットと寝ることで、睡眠薬の使用やカウンセリングの受診といった睡眠障害に対する治療にかかる費用を下げられるといった報告もあります。
2.抗不安効果
リラックス効果だけでも、ペットの癒しの効果はすごいと思いますが、実はそれ以外にももっとすごい効果があるのです。
日本でも、近年PTSDという言葉がよく知られるようになっていますが、「心的外傷ストレス障害」という症状はご存知ですか?
衝撃的な出来事を経験することで、その後に長い期間フラッシュバックや悪夢などにより日常生活に支障がでてしまうことをいいます。災害や事故、海外では兵役を経験した方に発症することがあります。アメリカでは、戦争やテロなどによるPTSDに悩まされている方も多く、そのため、介助犬に関するシステムや研究がとても進んでいることもあり、介助犬がPTSDの症状を緩和することができるという研究があるのです。
突然のフラッシュバックや悪夢で苦しんでいる時に、介助犬がやさしく突き、圧をかけることで、フラッシュバックを止めてくれたり、悪夢から起こしてくれたりするのだそうです。また、PTSDの方は過覚醒といって、ストレスが解除されても緊張状態が続き、不眠症になったり、警戒心が強くなったりすることがありますが、ペットと一緒に寝ることでこれらの症状が緩和され、PTSDからの回復を早めたり、鬱や不安の症状を緩和してくれます。
3. 孤独感の軽減
近頃日本は、「孤独大国」といわれています。
内閣府の調査で、「孤独」を感じる人がだんだん増えており、約40%の人が孤独を感じたことがあるという調査結果が得られています。
家族との死別や離別はもちろんですが、引越しや人間関係のトラブルなど、さまざまな事象により、孤独を感じる人が増えています。「孤独」は社会問題となりつつありますが、ペットとともに寝ることは、こういった孤独感を軽減する作用もあるのです。
4.血圧の低下
犬とのふれあいや交流によって人間の血圧を低下させることで、突然死のリスクを下げられることが報告されています。また、ペットを飼育することで、心筋梗塞や脳卒中発症後の予後が改善されたという論文もあります。なお、良い睡眠は、高血圧の防止にも作用します。睡眠不足が高血圧を引き起こすと言われており、高血圧がさらに睡眠障害を引き起こし、どんどん悪循環になります。そのため、ペットと寝ることでリラックスし、血圧も下がることで入眠時にもよい影響を及ぼします。
5.免疫やアレルギーに対する作用
ペットと一緒に寝ることは決していいことだけではなく、デメリットもあります。そのうちのひとつが感染やアレルギーだと思います。犬・猫アレルギーもありますが、ペットが散歩でさまざまな花粉やダニ、細菌、真菌などを拾ってきて家に持ち込むことで、感染やアレルギーを発症するリスクがあります。アレルギーをもっている方にとっては非常に耐え難い問題となります。
しかし、これは長期的に追っていくと、ペットとともに寝ることで少しずつこれらのアレルゲンや感染源に晒されると、アレルギーを発症することを抑えられ、免疫があがることで感染症を発症するリスクを下げることができるというメリットもあるのです。
コロナウィルスの流行でマスクをし続けたことで、沈静化した後、これまでよりもインフルエンザなどの感染症が爆発的に流行ったことからも、細菌やウィルスの暴露がないことは免疫を低下させるリスクにもなります。そのため、日頃からある程度アレルゲンや病原体に暴露されることは決して悪いことばかりではありません。い場合についてお話ししたいと思います。
ペットと一緒に寝ることのメリットをお話ししてきましたが、次回の豆大福の育児日記では、ペットと寝る際に気をつけること、ペットと一緒に寝てはいけない場合についてお話ししたいと思います。
獣医師 中川 恭子